大石はなんで手塚の考えてることとか言いたいこととか分かるんだろう。 オレはあんまりわかんない。 あいつの表情の区別ってなかなかつかない。 オレだって手塚と一年とちょっと―――大石と同じだけ一緒に部活してきてんのに。 なんで大石は手塚がわかるの? 『・・・いつも見てるから、かな』 前に訊いたら、大石はちょっと考えてからそう言った。 『手塚君って何かこう―――危なっかしいだろ?気になっちゃって』 『そうかなぁ?オレにはいっつも自信満々に見えるけど』 『うん、そうなんだけど・・・何て言ったらいいかな、心配っていうかハラハラするっていうか』 『ボセーホンノーくすぐられるってわけだ』 『そういうんじゃないよ!何言い出すんだよ、まったくもう・・・でも妙に気になって、自然に目が行っちゃうんだ』 ・・・あれ、なんか変だね僕。 そう言って笑った。 オレも笑いかえした。 ヘンじゃないよ。 それオレもわかるよ。 すごく。 きっとそうなんだ。 大石は、手塚が―――・・・。 そして多分。 手塚も。 大石が。 だって大石と話してるときの手塚は怖くない。 いつもみたいな冷たい無表情じゃない。 どっか安心してるような、リラックスしてるような。 大好きな人のそばにいるような。 他の部員は気づいてない。 タカさんも、不二も。桃も海堂も荒井も。 乾のデータでもきっとわからない。 それくらい微妙な変化。 ううん、変化 じゃない。 ほんのちょっぴり空気があったかくなるような、そんな「感じ」。 オレだからわかるんだ。 オレも 大石が好きだから。 ←戻る 次→ 一覧へもどる 背景借用…六月(閉鎖?) |